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曲目解説 

ホルスト(1874〜1934イギリス)組曲『惑星』作品32(1916年作曲)

 

ホルストは太陽系の惑星を天空の神々と結びつけて運を占うという、西洋占星術からヒントを得て本曲を作曲した。

 

1,火星 戦争をもたらす者 0:07:25

 

通常のように、弦楽器は弓の毛の部分で弾くのではなく、弓の木の部分で音を出すというコルレーニョと呼ばれる奏法を印象的に使って、一定のリズムで、どんどんと、ごく弱い音から大きくなっていき、しまいには強大になるという正に勇壮な曲。まるでこちらに向かってくるかのようだ。映画『スター・ウォーズ ジェダイの復讐』(1977年・アメリカ)の音楽(ジョン・ウィリアムズ作曲)の「帝国のマーチ、ベイダーのテーマ」の音楽は、本曲からの影響を受けたと筆者には思える。

 

2,金星 平和をもたらす者 0:08:59

 

打って変わって平和そのもので、ヴァイオリンのソロやハープ、チェロのソロの調べが静かにゆったりと流れる。

 

3,水星 翼のある使者 0:04:02

 

音楽がぐるぐると回転を重ねながら聴こえてくる。主なメロディーを奏でる楽器群は、弦楽器群、木管楽器群と、つづれ織りのように変化を遂げていき動きをみせる。正にオーケストラの多彩さがあふれ出てくる。

 

4,木星 快楽をもたらす者 0:08:02

 

冒頭の勇壮さは格別。3:02からが有名なメロディー日本のポップス歌手平原綾香が「Jupiter(ジュピター)」としてカバーしたことで有名になった。 最後の所は映画『バック・トゥー・ザ・フューチャー』(1985年・アメリカ)のラスト・シーンの音楽(ジョン・ウィリアムズ作曲)は、本曲から影響を受けたと筆者には思える。しかし本曲はその69年も前に作曲されている。

 

5,土星 老いをもたらす者 0:09:35

 

木管楽器の「鐘」のような鳴りや、低音を司るコントラバスが重々しさを演出し、金管楽器が高鳴り打楽器のティンパニーが一閃、炸裂する。全編通じて静かにゆっくりと重々しく歩を進めていく。

 

6,天王星 魔術師 0:06:04

 

冒頭の金管のファンファーレに続き、ティンパニーの連打、1:30からはじまる印象的で勇壮な行進曲が一気に突き進み、聴く者に勇気を与えてくれる。再びティンパニーが躍動する。印象的な終わり方。

 

7,海王星 神秘主義者 0:07:01

 

4:10ごろから女声合唱がさりげなく登場。宇宙空間に音の細かな粒子のように。ホルストは作曲時に、「観客からは見えない扉を開け放った別室に、女声合唱団を配置して」、最終部分では、「合唱が消えていくように、別室の扉をゆっくりと閉めていくように」とホルスト自身による指示を書き入れている。

 

8,冥王星 作曲コリン・マシューズ(イギリス 1946年〜)冥王星 再生の神・復活をもたらす者 0:06:15

 

イギリスの作曲家コリン・マシューズが2000年に発表しホルストの『惑星』に追加して演奏される。オーディオ的なレンジの広さは実に広大で、音の粒子が空間にまき散らされているようだ。後半は一転して激しく宇宙の神秘からの強大な爆発(ブラックホール)を感じさせるような凄みをみせる。

 

そもそも冥王星は、少々複雑な星。マシューズが作曲した2000年当時は、冥王星は太陽系の第9惑星とみなされていた。その後、2006年に国際天文学連合により準惑星扱いに変更されたので、現在は太陽系の惑星の数としては、ホルストの作曲当時の数と結果的に同じ8個になった。

 

宇宙をテーマにした4つの委嘱曲(2006年の作品)

 

ラトルが2006年に4人の現代音楽作曲家に依頼した作品。このうちトータティス、オシリス、ケレスは、太陽系の周りを取り巻く小惑星帯に属する小惑星の名前。

 

9,カイヤ・サーリアホ(フィンランド・1952年〜)『アステロイド4179:トータティス』 0:04:36

 

フィンランドの女流作曲家の作品。地球と軌道が似ているため、地球と衝突する可能性があると話題となったダンベル型の小惑星「トータティス」をイメージして描いたパースペクティブな作品。

 

10,マティアス・ピンチャー(ドイツ・1971年〜)『オシリスに向かって』0:07:55

 

作曲者のマティアス・ピンチャーは2015年にはベルリン・フィルを指揮して指揮者としてもデビューしている。オシリスとは太陽系の小惑星帯にある小惑星。エジプト神話に登場する神。フル・オーケストラが音の粒子の細かい世界を創り出す。

 

11,マーク=アントニー・タネジ(イギリス・1960年〜)『ケレス』0:06:40

 

ケレスとは太陽系の準惑星に分類され、ローマ神話の農業の女神から命名。日本の雅楽を彷彿とさせる色彩的な空間の音楽。

 

12,ブレット・ディーン(オーストラリア・1961年〜)『コマロフの失墜』0:07:49

 

作曲者のディーンはベルリン・フィルのビオラ奏者を1984年〜15年間も務めた。曲は1967年のソ連の宇宙船ソユーズ1号の事故で事故死したコマロフ飛行士をテーマとした『コマロフの墜落』を元にしている。米ソの宇宙競争による悲劇を描いた。ごく弱い音からだんだんと大きくなりしまいには強大になっていきまた再びごく弱い音に戻っていくという音楽で表現している。

文:野村和寿

 

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 9曲ベートーヴェンの交響曲を全部自分のものにしたい!

 

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雑誌編集者を長くつとめ、1975年にカール・ベーム指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団日本公演のブラームス交響曲第1番の最終楽章で、鳥肌が立ち、帰り道をさまよった経験を持つ。爾来、クラシックを生涯の友として過ごしてきた。編集者時代、クラシック以外のロックやジャズといったジャンルのアーティストと交流を深めるうちに、クラシックと、楽しさにおいて何も変わらないことに確信を持つ。以来、ジャンルを取り払ってハイレゾまで、未知なる音の発見の喜びを日々捜している。MQAを提唱しているイギリス・メリディアンには1991年以来2回オーディオ雑誌の取材で訪れ、基本コンセプトに魅せられた。またカメラ好きでもあり、特にドイツの光学製品に魅せられ、ライカのカメラ群とそのレンズの蒐集に執念を燃やしている。

 


写真:イギリス・グリニッジ天文台
写真:イギリス・グリニッジ天文台

サー・サイモン・ラトル指揮

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン放送合唱団(女声合唱) 

 

2006年3月16〜18日 ベルリン・フィルハーモニーで録音

 http://www.e-onkyo.com/music/album/wnr825646328475/

レコード会社 ワーナー・ミュージック・ジャパン

ハイレゾ音源提供 e-onkyo music

2,515円(税込価格)

◎実際の販売価格は変動することがあります。価格は税込価格(消費税10%)です。



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