クラシック音楽がなんだか最近、急に自分に合っている音楽だと思えてきた。たくさんあるクラシック音楽、いったいどこから攻め落としていけばよいのだろう?そんな方のためにとっておきのMQAアルバムをご紹介する。 

 

『カラヤン ザ・ベスト・オブ・マエストロ』

~アビイ・ロード・スタジオ新リマスターによる

 

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮

フィルハーモニア管弦楽団、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

 

ファイル形式 

MQA Studio 96kHz/24bit

 

 

 「クラシック音楽作品名辞典」改訂版によると、クラシック音楽の作曲家はおおよそ1,240人、作品名は約43,900もあるという。(『クラシック音楽作品名辞典改訂版』・三省堂より)実際にクラシック音楽作品は、もっとあるかもしれない。残りの人生すべてをかけてさえも、そうそう網羅して聴くことは難しいほどの正に膨大な数である。

 

この膨大な数のクラシック音楽を録音してしまうという偉業に、たったひとりで、挑戦した20世紀を代表する大指揮者がいた。ヘルベルト・フォン・カラヤン(19081989年)である。カラヤンは、レコード・レーベルのなかでも、EMI(現在はワーナー・ミュージックに吸収、以下現ワーナーと略す)、グラモフォン、デッカ、ソニークラシカル(DVD)に膨大なクラシック音楽の録音を行っている。その数、EMI(現ワーナー)に手元の集計でも163曲、グラモフォン、デッカに1,189曲もクラシック音楽を録音しているのである。

 

これらの膨大なレパートリーのなかで、これはと思われるクラシック音楽を集めているのが、本アルバム『カラヤン・ザ・ベスト・オブ・マエストロ』である。

このアルバムは、ワーナー・ミュージック・ジャパンからリリースされているが、音源は、イギリスの旧EMI(現ワーナー)レーベルに、20世紀を確かに代表する大指揮者カラヤンが録音した膨大なアーカイブスのから曲目が選ばれて構成されている。内容は1955年から1984年にかけてのステレオ録音を、2014年にロンドンのアビイ・ロード・スタジオで、最新の技術で音を、もう一度ハイレゾでマスタリングをし直したもの。

 

アビイ・ロード・スタジオといえばビートルズの全アルバムを制作した録音スタジオとして有名だが、録音スタジオのほかに、ポスト・プロダクション、アーカイブの修復にかけても長年の実績を上げている。サイモン・ギブソンを始めとする4人のエンジニアたちが、気の遠くなるほどの時間をかけて1本ずつ入念にアナログ・マスター・テープをチェックし修復し、アナログから24bit96kHzのハイレゾでデジタル・リマスタリングしたものである。

 

修復された音を改めて聴いてみると、当時の若きカラヤンの颯爽とした音楽がまさに甦っている。古さを感じる録音ではなく、まるで現代に演奏されているようにいきいきと聴く者を魅了する。それもそのはずで、録音当時のプロデューサーのウォルター・レッグ(19061979年)により、録音は現在とは比較にならないくらい、時間をかけて、ゆっくりとオーケストラのセッションが行われたために、今ではなかなか聴く事ができなくなっている余裕のある音の凄みのようなものが、感じられてうれしい。

 

本アルバムのカラヤンが指揮したオーケストラを御紹介しよう。1,2,4,5,8,12トラックは、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団。ベルリン・フィルとは、カラヤンはフルトヴェングラーの後任として、1954年から1989年まで芸術総監督の地位にあったので、旧EMI(現ワーナー)、グラモフォンと2つのレーベルに、ベルリン・フィルとの録音を数多く残している。ウィーンフィルとも、 1956年母体となるウィーン国立歌劇場の芸術監督(19561964年)になったご縁で、カラヤンはたびたびウィーン・フィルと録音をしている。

 

そしてもう1団体がイギリスのフィルハーモニア管弦楽団である。プロデューサーのウォルター・レッグが 1945年に創設した録音専用のオーケストラだったが、指揮者には、戦後いち早く若きカラヤンを起用した。まさに、このオーケストラは、カラヤンのために作られたといっても過言でないオーケストラであった。ロンドンにはロンドン響、ロンドン・フィル、ロイヤル・フィル、BBC響などの名門オーケストラが多数ある中で、選抜された名手揃い。コンサート・リーダー(マスター)には、名手マヌーグ・パリキアン(192087年)が参加、ホルンには名手デニス・ブレイン(192157年)の顔もあった。

 

カラヤンが録音を残したレコード・レーベルは、そのレコード会社のレーベルごとにサウンド・ポリシーがそれぞれ異なっていて、同じカラヤンの演奏でも、レーベルによって、ずいぶんと違って聴こえてくる。ベルリン・フィルと録音したドイツ・グラモフォンでは、克明にズームアップしたかのように楽器の表情をとらえ、いわば眼前に音楽が展開するように録音している。これに対して、旧EMI(現ワーナー)は、前半期はフィルハーモニア管弦楽団、後半のベルリン・フィルにも共通した音の収録のポリシーをもっている。コンサートホールの特等席、つまり、1階の中央席で聴いているような、オーケストラ全体を俯瞰して見るような贅沢な音楽作りを目指していた。

 

またカラヤンのクラシック音楽に対する姿勢も録音に大きく関係している。音楽評論家の黒田恭一氏(19382009年)は「自分のレパートリーを限って指揮するほかの巨匠指揮者たちとは違って、カラヤンはどんな些細な小さなクラシック音楽にも全身全霊をかけて指揮をして、素晴らしい音楽を創り出すのです。ここが最もカラヤンの特徴といえると思います」と語ったのを直接お聞きした覚えがある。つまり、今まで創られてきたクラシック音楽の数々をレコードに録音して、聴衆に、なるだけ平易にわかりやすく、紹介していこうという姿勢だった。

 

本アルバムのよいところは、そのカラヤンの指揮する音楽が本格的に堪能できる点にある。たとえば、モーツァルトの交響曲40番でも第1楽章が全部収録されているといったふうに、 本アルバムに収録されている13曲は、途中でフェードイン、フェードアウトしたりせず、音楽をまるごと収録している点もありがたい。(続く)


第1回

円形に並んだ弦楽器群から

広々とした空間に

広がって行く

音の醍醐味を味合う

『スーベニール(思い出)パート1』

〜チャイコフスキー 弦楽セレナーデ/ニールセン 弦楽のための小組曲

 演奏:トロンハイム・ソロイスツ


第3回

マリア・カラスをMQAで46曲たっぷりと味わう。

『ザ・ニュー・サウンド・オブ・マリア・カラス』

マリア・カラス