多様化するMQA再生環境 - 対応するハード&ソフトが続々登場!

 

山本 敦

 

■コンポのみならずポータブルオーディオの世界に広がったMQA


MQA 参入企業 2017/05 HI-END公表資料より (順不同)

 

 今年初に米国・ラスベガスで開催された「CES」でMQAのパートナーが拡大することが明らかになった。次世代デジタルエンターテインメントの普及促進に向けて活動する米国の業界団体であるDEGがハイレゾをテーマにしたブースをCESに出展し、MQAを含む音楽リスニングの新しいかたちを紹介。日本とアジアで先行していたハイレゾリスニングのブームが、いよいよ欧米にも浸透しそうな気運も高まっている。

 MQA対応を掲げる製品はハード・ソフトともに増えているが、本稿ではあらためてMQAのサウンドを楽しむための最新情報をまとめておきたい。

 

 

■TIDAL/Audirvana PlusのMQA対応により、MQAの楽しみ方が広がった

 

 今年に入ってから、ワーナー・ミュージックのほかにもメジャーレーベルの中からユニバーサルミュージックとソニー・ミュージックエンタテインメントがMQA対応の音楽作品をリリースすることを発表した。この動きに伴い、欧米を中心に熱烈な支持を受ける音楽配信サービス「TIDAL」が、かねてから入念に導入テストを行ってきたMQAによるハイレゾ配信を遂に1月からスタートさせた。その衝撃は既存のTIDALユーザーのみならず多くのオーディオファンへと瞬く間に伝わった。

 

 TIDALは96kHz、48kHzの24bit音源を中心に、一部その上位ビットレートにも及ぶ幅広いハイレゾ音源を「TIDAL Masters」のカタログに揃えている。内容は洋楽の名盤と言われるロック・ポップスから、ジャス、クラシック、最新のヒットアルバムまでおよそ3万曲のハイレゾ作品が幅広く並んでいる。MQAエンコードされた音源を、TIDALのアプリケーション側に実装したソフトウェアのMQAデコーダーで再生することにより、MQA非対応のDAC機器と組み合わせても高品位な音楽再生が楽しめるようになるのが特徴だ。

 

 直近では2月末に、MacでPCオーディオを楽しむユーザーに人気のハイレゾ対応プレーヤーソフト「Audirvana Plus」が最新バージョンの「3」にアップデートされ、MQAデコーダーを実装したことが大きな話題を呼んでいる。こちらのソフトもPCにインストールして、MQA非対応のUSB-DACと組み合わせてMQAの魅力が存分に味わえる。

 

 Audirvana Plus 3の場合も、ソフトウェアの側でデコードできるMQAファイルは音源のコア情報が含まれている96kHz/24bitまでとなる。MQAのチェアマン兼CTOであるボブ・スチュアート氏はその主な理由を2点挙げている。ひとつはPC上でソフトを走らせるための負担を考慮したためであるという。そしてもうひとつはTIDALなどの音楽サービスで扱われているMQAのハイレゾ音源は、現在のところ96kHz/24bitのものがスタンダードになりつつあるので、いまハイレゾリューションオーディオの魅力をできるかぎり多くの音楽ファンに楽しんでもらうためには最善のバランスと考えたからだ。

 

 なお、TIDALとAudirvana Plus 3ともに、ソフトウェアのデコーダーをスルーして、PCに接続したMQA対応のUSB-DACなど外部機器にデコード処理を受け渡して再生する設定も選べる。その場合はどちらの組み合わせがよりMQAの音源を再生したときに良質なクオリティが得られるのだろうか。

 

  スチュアート氏は「コア部分が再生できるTIDALとAudirvana Plus 3ともに“パーフェクトなMQA再生”ができる。けれども、フルデコーダーを搭載するDAC製品と組み合わせれば、より上質で“エクセレントなMQA再生”が可能」であると説明している。その理由については、MQAではフルデコーダーを搭載する機器についてはDACチップの性質に合わせたデコード処理ができるだけでなく、アナログ回路、デジタルフィルターのデザインまで全てを含めむリッチな「Analogue to Analogue」の音楽再生のプロセスをデザインしているからなのだという。

 

 TIDALについてはまだ残念ながら日本で正式にサービスがスタートしていないが、Audirvana Plus 3は日本から公式ホームページにアクセスしてダウンロード購入ができる。MQA再生に対応するメリディアンオーディオのUSB-DAC内蔵ヘッドホンアンプ「Explorer 2」との組み合わせによるフルデコードのサウンドと、手持ちのMQA非対応のアンプと組み合わせた場合のサウンドを聴き比べてみても面白そうだ。

 

 

 

■ハード機器に追加された新カテゴリー「MQAレンダラー」とは

 

 MQA対応のハード機器については新たに区分けが整理され、「MQAレンダラー」というカテゴリーが追加された。スチュアート氏はMQAレンダラーの定義について「Audirvana Plus 3のようなMQAのコア部をデコードできる製品と組み合わせて、MQAのフルデコード再生が楽しめるようになるデバイス」であると語っている。

 

 代表的な製品の一例に、メリディアンオーディオのDAC内蔵プリアンプ「818v3」と同社のDSP内蔵パワードスピーカー「DSP7200SE」の組み合わせがある。両者をペアとして揃えてMQA音源を再生すると、818v3がMQAコアをデコードして、音声信号がデジタルのままMQAレンダラーであるDSP7200SEに送られてフルデコード再生が行われる。

 

 もともと96kHz、88.2kHz以上の音質で収録されているMQA音源については、レンダラーが内蔵するDACの実力に合わせたデコード処理が行われることにより、さらに上質な音楽再生が期待できるというわけだ。なお米Audioquestのスティック型USB-DAC内蔵ヘッドホンアンプ「DragonFly Red/Black」もMQAレンダラーとして、MQAファミリーに新しく加わる製品として発表されたばかりだ。

 

 スチュアート氏はMQAレンダラーというカテゴリーが追加されたことによって、今後モバイルオーディオの領域にMQA体験が広がることを期待している。「将来スマホやハイレゾDAPなどのモバイルアプリにMQAデコーダーを組み込んで、デジタル接続のMQAレンダラーにあたるポケットDACなどをつなぐことで、手軽にMQAを聴ける環境が生まれるだろう」。スチュアート氏が描くモバイルオーディオへの展開はまた、今いくつかの半導体メーカーが開発していると言われる、MQAデコーダーを組み込んだDAC用ICチップが現実のものになることによってさらに多様性が増す可能性もある。

 

 



 

 

■ハイレゾを楽しめる世界初の「MQA-CD」が発売された

 

 最後にMQAの最新トピックである「MQA-CD」が世界で初めて3月にリリースされたことも報告しておこう。MQA-CDとは、MQAの音源ファイルを既存のCDディスクに収録した新しいパッケージソフトだ。一般的なCDプレーヤーで再生することができ、メリディアンオーディオの「ULTRA DAC」などMQA対応のDAC機器と同軸、または光デジタル接続でつなげばMQAならではのメリットを活かした上質なハイレゾ再生が楽しめるようになるのが特徴だ。もちろん通常のCDとしても再生ができる。この場合は音源がMQA独自のエンコード処理をかけて時間軸の情報を高精度に保ったソースになるので、通常のCD再生するよりも音質は良いものになるという。

 

 MQA-CDの第1弾作品は、3月17日にOTTAVA Recordsが発売したクラシックアルバム「A.Piazzolla by Strings and Oboe」である。通常のCDと変わらない2,500円(税抜)というリーズナブルな価格なので、今後タイトルが増えれば「ハイレゾを手軽に楽しめるCD」としても認知も広がり、MQA音源をパッケージでコレクションする楽しみが増える。

 

 2月には初のMQA対応スマートフォン「グランビート DP-CMX1」がオンキヨーから発売された。さらにHi-Fi系のコンポーネントとしてはテクニクスのネットワークオーディオアンプ「SU-G30」も基幹ソフトのアップデートによりMQA対応を実現している。いま音楽ファンが思い思いの方法でMQAのサウンドを体験できる機会が充実してきた。

2017 Atsushi Yamamoto


【関連情報】

 

MQA Limited  ホームページ(英文) http://www.mqa.co.uk/ 

 

MQA技術説明  日本オーディオ協会      JASジャーナル2015年11月号