より広く・より深く ー 2018年「MQA」の新展開を占う

 

山本 敦

 

2017年は音楽リスニングをいい音で、より便利に楽しめるMQAのテクノロジーが広く認知された年になった。2017年にMQA周辺で起きた出来事をまとめながら、2018年以降の動向を予想してみよう。

 


 

■MQA再生の圧倒的なリファレンス「ULTRA DAC」が誕生

 

 2017年の春、MQAは花盛りの時を迎えた。年明けとともに欧米で人気のロスレス音楽配信サービス「TIDAL」がMQAによる音楽配信を開始。Mac対応のハイレゾ音楽プレーヤー「Audirvana Plus 3」がMQAデコーダーを搭載したことで、ダウンロード購入できるMQA音源を様々なUSB-DACとの組み合わせで聴ける環境が一気に広がった。

 

 ハードウェアにも様々な新しい展開が訪れた。メリディアンオーディオのUSB-DAC内蔵ヘッドホンアンプ「Explorer 2」に代表される、本体にMQA対応のハードウェアデコード機能を搭載する「MQAデコーダー」のほか、Audirvana Plus 3のようにMQA音源のコアをデコードできるハード&ソフトウェア製品と連携してMQA音源の実力をフルに引き出す「MQAレンダラー」が続々と増えている。AudioquestのUSBスティック型DAC内蔵ポタアンの「DragonFly Red/Black」や、iFI Audioの「nano iDSD Black Label」などポータビリティの高いオーディオ機器に裾野が広がりつつあるようだ。

 

 そして満を持して登場したメリディアンオーディオのフラグシップモデル「ULTRA DAC」について言及することも忘れてはならない。MQA音源は最高384kHz/24bit対応。豊富なデジタル入力インターフェースを備え、LAN端子も設けたことから、ホームネットワークにあるNASに保存した音源も音楽再生ソフト「Sooloos」や「Roon」を使って手軽に楽しめる。再生時にはピュアな音楽リスニングの妨げになる量子化ノイズや時間軸の分解能を徹底的に追究した「Hierarchical Converter Technology」により、生演奏の感動をオーディオルームにありのまま再現する。本機が誕生したことによって、2014年に当時メリディアンオーディオとして発表したMQAが、Hi-Fiオーディオ再生のためのテクノロジーとして最初の大きな到達点を迎え、ひとつの揺るぎないリファレンスを打ち出した。

 

 MQAのパートナーシップは筆者が本稿を執筆している2017年12月末時点で、テクニクスやエソテリック、クリプトン、マーク・レビンソンにdCS、マイテック、クレルなど国内・海外の一流ハイエンド・オーディオブランドに広がっている。2018年はさらに多くのブランドが超弩級のMQA対応コンポーネントを発表するかもしれない。

 

■ソニーのウォークマンがMQA再生に対応した

 

 2017年はMQAがモバイル&ポータブルオーディオにも勢いよく広がった。春にはオンキヨーが日本と香港で発売した本格ハイレゾ・スマホ“GRANBEAT”「DP-CMX1」に搭載され、MQAのエコシステムがはじめてインターネットに常時接続できるスマホにも広がった。

 

 それから少し間を置いて、今度はLGエレクトロニクスがグローバルモデルのハイレゾ・スマホ「LG V30」でMQA対応を発表。日本にも「LG V30+」として、KDDIとNTTドコモから2018年1月までに発売される。国内ではe-onkyo musicのオンラインストアでMQA音源が販売されているが、どちらの端末もPCレスでMQA音源を購入・ダウンロードして聴くことができる。その便利さは体験してしまうと手放せなくなること請け合いだ。

 

 ポータブルオーディオプレーヤーにもMQA対応モデルが一気に増えた。中でもソニーのハイレゾ対応“ウォークマン”の2017年秋モデルに要注目だ。2万円台から購入できる入門機の「A40シリーズ」、バランス出力に対応した大人気のプレミアムクラス「NW-ZX300」、そしてフラグシップの“Signature”「WM1Z/1A」がMQA音源をネイティブ再生できる現行モデルだ。お気に入りのヘッドホン・イヤホンと組み合わせて、いつでも・どこでもMQAサウンドをいい音で楽しみたい方には、音楽再生に特化したポータブルオーディオプレーヤーの選択をおすすめしたい。

 

 パイオニアから発売された“private”「XDP-20」も3万円台でバランス出力やDSDネイティブ再生をサポートするハイCPモデルだ。MQA再生も意欲的にサポートして、兄貴分のXDP-300R、XDP-30Rと引けを取らないほどの高機能を備えている。ソニーのウォークマンとともにいま最も手軽にMQAの魅力を体験できるデバイスだ。オーディオ然としていないカラフルで丸みを帯びた優しいデザインにも惹かれる。

 

 オンキヨーグループでは、2017年の9月にドイツ・ベルリンで開催されたエレクトロニクスショーに出展した際、オンキヨーブランドのポータブルオーディオプレーヤー“rubato”「DP-S1」で、現在はまだ対応していないTIDALのMQAストリーミングをWi-Fi経由で受信して再生するデモを行っていた。音質面での優位性だけでなく、ネットワークを経由してストリーミングする際のデータ消費量が大幅に節約されることもMQAが持つ大きな特徴だ。テクノロジーの登場以来、現在までどちらかと言えば据え置きのHi-Fiオーディオで“いい音”が楽しめることのメリットが中心に紹介されてきたが、今後はスマホも含むポータブルオーディオ機器でハイレゾ再生をより手軽に楽しめるMQAの優位性にスポットが当たる機会も増えそうだ。

 

オンキヨーのハイレゾスマホ“GRANBEAT”「DP-CMX1」はMQAネイティブ再生にはじめて対応したスマホでもある

「LG V30+」は日本でKDDIとドコモが発売。世界で展開されるグローバルモデルだ

 


IFAの会場、LGエレクトロニクスのブースにて。LG V30がローンチされ、MQAの新展開に満足そうな笑みを浮かべるMQAのボブ・スチュアート氏とマイク・ジバラ氏

 

 

ソニーのウォークマン「NW-ZX300」は2017年に発売されたハイレゾDAPの人気モデル

 

ウォークマン「A40シリーズ」は手軽にハイレゾ再生が楽しめる注目機だ

 


オンキヨー「DP-S1」がIFA会場でTIDAL Mastersの

ダイレクトストリーミング再生を将来に向けた技術の

プロトタイプとして披露していた

 

 

■TIDALに続く配信サービスに期待。オートモーティブにもMQAが広がる?

 

 そして昨今は自動車にLTEネットワークへの常時接続機能を乗せた、いわゆる「コネクテッドカー」への注目が急速に高まっている。2019年からの商用化を予定する「5G」の次世代高速通信技術が本格的に浸透してくれば、いよいよ車の中でハイレゾ音楽ストリーミングが楽しめる時代がやってくるかもしれない。その時にも高音質なままデータ通信の容量をセーブできるMQAのテクノロジーが重要な役割を担うことは間違いないだろう。2018年はMQAのオートモーティブ領域への展開にも注目したい。

 

 ほかにもTIDALに続くMQA対応の音楽ストリーミングサービスの登場や、MQAのパートナーとして名乗りを挙げているソニーミュージックからのMQA作品の一斉リリースにも期待が高まる。2018年もMQAに関わるたくさんの話題を紹介したいと思う。

 

MQAとは?



東京モーターショーにLINEが展示した、AIアシスタント「Clova」を搭載するコネクテッドカー。音声操作でLINE MUSICの再生をコントロールできる。車と音楽コンテンツのつながりが今後ますます深くなっていくことになりそうだ

 

2017.12 Atsushi Yamamoto


【関連情報】

 

MQA Limited  ホームページ(英文) http://www.mqa.co.uk/ 

 

MQA技術説明  日本オーディオ協会      JASジャーナル2015年11月号