2018年「MQA」最新トピック ボブ・スチュアート単独インタビュー

ハイエンド・ミュンヘン 2018 現地レポート

 

山本 敦

 511日から13日まで、ドイツのミュンヘンで毎年開催されたオーディオショウ「HIGH END MUNICH 2018」を取材してきた。ピュアオーディオからポータブルオーディオまでひっくるめて、世界最大クラスの規模で開催されるオーディオショウはデジタルからアナログまで、見どころが沢山あり、MQAに関連する様々な新しい発表もあった。MQA会長のボブ・スチュアート氏への独占インタビューと一緒にお届けしたいと思う。


 ■「MQA Live」ライブ配信イベントがドイツで成功

 

MQAは今年のミュンヘンのイベントにブースを構えていたが、ハイライトはエソテリックとパイオニアのブースで実施した「MQA Live」のデモンストレーションだった。残念ながら筆者は同じ時間に重なる先約があったため足を運べなかったのだが、イベントの内容は5月11日にロンドンのレコーディングスタジオ「The Pool」から、リアルタイムでMQAストリーミングを配信して、Roonを中心とした再生システムでプレイバックするというものだったようだ。イベントの詳しい模様は音元出版・Phile-webにて評論家の山之内正氏がレポートしているので、ぜひチェックしてみてほしい。

 

MQA Liveの試みは、今年の3月にアメリカで開催されたエンターテインメントのイベント「SXSW(サウス バイ サウスウエスト)2018」で初めて実施されて成功を収めた。ドイツでもその実績を積み重ねることができたスチュアート氏の表情は充実感に満ちていた。

 

試作段階のiPhone向けAmmaraアプリの操作もテストしてみた。iPhoneでのハイレゾ再生がぐっと身近になりそうだ。
試作段階のiPhone向けAmmaraアプリの操作もテストしてみた。iPhoneでのハイレゾ再生がぐっと身近になりそうだ。

 

iPhoneMQA再生が楽しめる「Amarra Play」が近くローンチか

 

MQA対応のスマホといえばオンキヨーのGRANBEAT/DP-CMX1LGエレクトロニクスのV30があるが、今年LGエレクトロニクスが欧州や韓国などで発売した新機種のLG V30 ThinQは、MQAのストリーミング音源をデコードして再生できる初のスマホになりそうだ。TIDAL MastersMQA音源をリアルタイムに再生できるほか、スチュアート氏は「年内にあと何社かがMQAの音楽配信を始める予定がある」としている。スマホで楽しむMQA再生については、iPhoneに関わる新しい動きもありそうだ。

 

iPhoneMQA再生が楽しめるデコーダー搭載の音楽プレーヤーアプリが間もなく登場することになりそうだ。スチュアート氏はミュンヘンの会場にAmarraが開発中の「Amarra Play」のテスト版をインストールしたiPhoneを持参していた。もうMQA音源を再生して音を聴くこともできた。欧米ではApp Storeでの提供が間もなく始まるそうだ。iOS向けにはこのほかにもレコードレーベルのNUGSが独自にMQAプレーヤーソフトの開発を進めている。こちらもスチュアート氏の端末に入っていた。日本でも利用可能になるのか、正式リリース後に明らかになる情報が待ち遠しい。

 

PC向けアプリケーションとしては、先日52日にRoonMQAを正式にサポートした「Ver1.5」をリリースした。Macユーザーにお馴染みのハイレゾ対応音楽プレーヤーソフトのAudirvana Plusも、5月末にWindows 10対応の「Audirvana Plus for Windows 10」をローンチする予定です。ユーザーインターフェースも一新される予定の定番ソフトがWindows環境にも広がることでMQA再生のエコシステムがさらに豊かさを増していくことになりそうだ。

 

音源については先日国内でも発表があったとおりMQA-CDの作品がユニバーサルミュージックから100タイトル、6月に発売されるほか、海外でOnkyo Musicが引き続き、MQAタイトルの拡充を進めていることを表明した。


 

 ■ESSが最新DACにMQAレンダラーを搭載/Astell&KernMQA対応試作機を発表

 

ハードウェア開発のバックヤードに関連するところでは、ESS Technologyが次世代のSABREシリーズのモバイルDAC、ヘッドホンアンプのICチップにMQAレンダリング機能を付与したラインナップを追加することを明らかにしている。スチュアート氏はESSがパートナーに加わることでMQA再生を高品位な環境で楽しめる機会が大きく広がり、MQAへの関心もさらに高まるのではと期待を寄せていた。

 

ミュンヘンのオーディオショウのタイミングでMQAの新しいパートナーとして名を連ねたのはノルウェーのHegelとデンマークのLyngdorf2社だった。

 

またアステル&ケルンもMQA対応に向けた準備を進めていた。HIGH END MUNICHに出展していたブースでは、アステル&ケルンが発表した最新のポータブルオーディオプレーヤー「A&futura SE100」がMQAに対応した際のユーザーインターフェースを紹介するための試作機が用意されていた。アステル&ケルンのスタッフは対応時期については未定としながら、「最新世代よりも前のモデルについても、ソフトウェアアップデートで対応できる製品についてはなるべく広くMQA対応ができるようにしたい」と語っていた。

 

カーオーディオも巻き込んだMQAの今後の展開についても期待ができそうだ。スチュアート氏は具体的なパートナーシップの内容については申し上げられないがと前置きしつつ「既に3GクラスのテレマティクスシステムでもMQA配信が正常に動作することを確認できています」と、ローンチに向けた準備が着実に進んでいることをアピールしていた。

 

日本国内でも2020年の東京オリンピック開催に向けて次世代高速通信「5G」の環境整備や、オートモーティブの通信対応が一気に加速する気配を見せているだけに、今後MQAに限らず、高品位なエンターテインメントを車の中で楽しむ機会が増えそうだ。

 

 

文・写真/ライター 山本敦

 


LGのスマートフォン LG-V35にもMQA再生機能が実装されている。ジャケット写真の下のグリーンのアイコンはMQA再生状態を示すもの。

MQAに対応した際のユーザーインターフェースを搭載した「A&futura SE100」の試作機。

 


 

2018.5 Atsushi Yamamoto



【関連情報】

 

MQA Limited  ホームページ(英文) http://www.mqa.co.uk/ 

 

MQA技術説明  日本オーディオ協会      JASジャーナル2015年11月号