ボブ・スチュアート氏に聞く ー メリディアンがDSPスピーカーで目指すもの

 

■アクティブ・スピーカーというカテゴリーを創出したメリディアン35年の歴史

 

スマートフォン、あるいはウォークマンやiPodなどコンパクトなポータブルオーディオ機器の普及に伴い、ヘッドホンやイヤホンを使ってアウトドアで音楽を楽しむスタイルが世界各国若年層を中心に広がっている。この傾向にオーバーラップするように、CD以上に高音質なハイレゾ音源の普及も進んでいる。音楽をいい音で聴くことの価値が多くの人々に伝われば、今後はスピーカーで音楽を聴く楽しみ方にもスポットが当たるのではないだろうか。

 

スピーカーで音楽を聴くためには、単体のオーディオプレーヤーとアンプ、USB-DACなどのコンポーネントを揃えて、それぞれをケーブルにつないで再生システムを構築する方法が一般的だが、スピーカー本体にUSB-DACやアンプ回路を内蔵する「アクティブスピーカー」への注目も、ハイレゾの普及とともに高まりつつある。

 

コンパクトなデスクトップサイズのアクティブスピーカーには、代表的なモデルとしてクリプトンの「KS-HQM3」などがある。海外では積極的にアクティブスピーカーを主力モデルとして手掛けるハイエンドオーディオブランドも多い。何より忘れてならないのは、Hi-Fiクラスのアクティブスピーカーというカテゴリーにおいては、イギリスのメリディアン・オーディオが先駆者的なブランドであるということだ。

 

メリディアン・オーディオが最初にアクティブスピーカーを発売したのは1977年のことだった。その後1989年には最初のDAコンバーターとデジタル入力、パワーアンプを内蔵する“デジタル対応”のアクティブスピーカー「D600」を開発。ヒットを飛ばした。矢継早、1990年にはDSP回路を内蔵するアクティブスピーカー「DSP6000」へ発展。これもまた大きな成功を収め、2000年のDSP内蔵スピーカーのフラグシップモデル「DSP8000」誕生へとつながっていった。

 

今ではメリディアン・オーディオのDSPアクティブスピーカーはラインナップを大きく拡張し「DSP7200」「DSP5200」などフロアスタンド型のスピーカーや、インウォールスピーカーにも銘機が名を連ねる。

 

 

 

DSP8000のカットモデル。デジタルで入力を受けてクロスオーバー処理を行う。その後各ユニットの特性に最適化させたDACとアナログアンプを搭載する。デリケートアナログ信号の引き回しはは、ラスト数十cmほどだ。
DSP8000のカットモデル。デジタルで入力を受けてクロスオーバー処理を行う。その後各ユニットの特性に最適化させたDACとアナログアンプを搭載する。デリケートアナログ信号の引き回しはは、ラスト数十cmほどだ。
メリディアン・オーディオでは「スピーカーは楽器である」という考え方のもとDSPアクティブスピーカーを開発している。リアまでデザインは行き届いて美しい。
メリディアン・オーディオでは「スピーカーは楽器である」という考え方のもとDSPアクティブスピーカーを開発している。リアまでデザインは行き届いて美しい。

 

■「スピーカーは楽器である」という考え方

 

一般的にアクティブスピーカーは、ユニットの特性に最適化したアンプを同じキャビネットに組み込むことで、安定感して“いい音”を再現できることが特長と言われている。メリディアン・オーディオのDSPアクティブスピーカーもその例外ではなく、本体に組み込まれた各帯域のユニットごとに特性を合わせ込んだDAコンバーターとパワーアンプを内蔵している点が大きな特徴だ。

 

DSPアクティブスピーカーを開発するにあたって、メリディアン・オーディオのチェアマン チーフテクニカルオフィサーのボブ・スチュアート氏は、「スピーカーは楽器である」という思想を繰り返し述べている。カスタムメイドのスピーカーユニットからキャビネット、アンプをはじめとするエレクトロニクスの隅々まで、音楽を忠実に再現できる楽器のように一体感あふれるスピーカーシステムとして完全度を高めることで、最終的にメリディアン・オーディオが理想とする、アーティストが思いを込めて演奏した音楽を、ありのままの状態でリスナーに届けられる環境が形を成す。

 

メリディアン・オーディオでは、スピーカーとソース機器の接続について独自の「Meridian SpeakerLink」と呼ばれる独自のインターフェースを採用している。DSPアクティブスピーカーを発売した当時は同軸タイプのデジタル接続としていたが、これにさらなる進化を加えることで完成したのがRJ45ベースのフラットケーブルだ。

 

1本の線でデジタルオーディオ信号を暗号化して送れるだけでなく、コントロール信号も流すことができる。メリディアン・オーディオではDSPアクティブスピーカーと組み合わせられる「Meridian SpeakerLink」対応のデジタルサウンドプロセッサーを数多く商品化しており、レコード盤などアナログソースもデジタルサラウンドプロセッサーを介すことで、同社のDSPアクティブスピーカーでより高品位に再現できる。

 

 

■スチュアート氏が語る「DSPアクティブスピーカーの魅力」

 

メリディアン・オーディオの、DSPアクティブスピーカーのメリットについてスチュアート氏は次のように語っている。「パッシブタイプのスピーカーは組み合わせるアンプやケーブルとの相性が合わないとスピーカーの特徴が活かせなかったり、場合によっては予期せぬ故障を招く心配も出てきます。一つのキャビネットに特性を完璧にマッチングさせたユニットとパワーアンプを、一つのキャビネットに組み込むことで、開発者が意図したサウンドにより近づけることができます。

 

物理的なクロスオーバーネットワークを必要としないため、良好な聴感上のバランスとインパルス応答も得られるなど、チューニングの面でも様々な優位点があります。スピーカーとエレクトロニクスの両方に卓越した技術を積み上げて、音響心理学のアプローチからも極上のリスニングを追求してきたメリディアン・オーディオならではの知見が最も活かせる製品カテゴリーであると考えています」

 

■スピーカーユニットごとにDACとアンプを搭載するマルチDA駆動。アンプの効率も飛躍的にたかい。

 

メリディアン・オーディオのDSPスピーカーは低域用に独自開発のデジタルパワーアンプを搭載したことで、通常のパッシブタイプのスピーカーと比べて1オクターブも低い低音が、筐体のサイズを肥大させることなく鳴らせる特徴があるという。また「EBA(Enhanced Bass Alignment)テクノロジー」により、マルチウェイスピーカーの課題とされている、各帯域間におけるタイミングのずれを解消しながら、よりクリアでライブ感あふれるサウンドが再現できる。

 

「メリディアン・オーディオのDSPアクティブスピーカーと同レベルの低音を再生するために、通常であればより大型なエンクロージャーが必要になります。本体をコンパクトに抑えられるので、省スペース設置ができる点がメリディアン・オーディオの製品の特徴です」

 

キャビネットはスプルース材とメタルプレートによる多層構造として共振を抑え、ピアノラッカーを塗り重ねることで強度も高めている。内部もブレージングによる補強や、吸音処理を丁寧に施してピュアでクリアなサウンドを実現している。本体のフロントパネルにはディスプレイを配置し、ボリュームや音場などスピーカーの動作状態がリアルタイムに表示される。

 

高品位なアナログ回路をもってしても解決できなかったノイズや劣化のファクターも、独自のDSPによる正確な演算処理を中心としたデジタル技術により回避。音質を極限まで磨き上げることに成功したメリディアン・オーディオは、まさにHi-FiクラスのDSPアクティブスピーカーの元祖と呼ぶべきブランドだ。「DSP8000」を筆頭とするDSPアクティブスピーカーは、30年以上に渡り「楽器」としてスピーカーシステムの完成形を追求してきた同社の技術と情熱の結晶であると言える。

 

2016年はメリディアン・オーディオが誇るDSPアクティブスピーカーの主力モデルの実力を活かせる、上質な据え置き型のHi-Fiオーディオコンポーネントが数多く発表されそうだ。新製品の日本上陸と、究極のハイレゾサウンドが体感できる機会が待ち遠しい限りだ。


ライター 山本敦

 

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コメント: 1
  • #1

    Albina Brin (金曜日, 03 2月 2017 21:04)


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